一般的には「フラダンス」として知られているハワイの民族舞踏ですが、
「フラ」にそもそも「踊り」の意味があるため、現地の人やフラダンスを学んでいる人からは
単に「フラ」と呼ばれます。
(英語で「富士山マウンテン」と言うようなものですね)
基本的には、ハンドモーションと呼ばれる手の動きで歌の詩を表し、表情や全身の動きで感情を表します。
そこにステップが加わりますが、これはリズムを取るためではなく、ハンドモーションの補助的役割が主です。
ハンドモーションは例えば愛を表す「アロハ」は広げた両手を胸の前で交差させる、花(プア)は指を上に向けてつぼめる、
雨は両手を斜め上から、指先を動かしながら斜め下におろすと言った具合です。
どれも自然に内容を理解できるようなもので、ハワイの自然崇拝と密接に関連しているのがよく分かります。
起源については定かではありません。女神ラカが生んだ、または別の女神ヒイアカが、姉神であるペレを
なだめるために踊ったという二説がよく言われています。
本来の目的は芸術や娯楽的なものではなく、本来は厳粛な宗教行為と言えるものです。
日本でも伝統的に神楽の奉納などがありますが、同様に踊り自体が女神ラカへの捧げ物だったのです。
そのため、1800年代初頭にハワイにやってきたアメリカ人宣教師たちは、
フラを異教の踊りとして禁止しているほどなのです。
それは男性はふんどしのみ、女性は腰みのだけという露出の多いスタイルが
猥雑だということと、キリスト教を広めるために、ハワイの自然崇拝自体を禁止しようという目論見からでした。
その後、ハワイらしさを取り戻そうと様々な点で原点回帰を求めたカラカウア大王が、現代フラの基礎を生み出しました。
カヒコと呼ばれる古典フラとアウアナと呼ばれる現代フラの大きな違いは、
鮫の皮でできた太鼓やひょうたん製の太鼓イプ、石製のカスタネットであるイリイリなどの打楽器と
チャント(祈りを捧げる詠唱)中心だったシンプルな古典フラに対して、
現代フラは西洋音楽を取り入れ、ウクレレやスチールギターを使い、メロディ豊かになったことでしょう。
私たちが、思い描く、腰みのにフラワーレイで陽気に踊るハワイアンダンスであるフラは、
実はこの現代フラなのです。
現在では、古典フラも見直されてきており、競技会では古典フラの部門も一般的になってきました。
現代フラの父となったカラカウア大王をたたえ、そのニックネーム「メリー・モナーク」(陽気な君主)を冠とした
「メリー・モナーク・フェスティバル」が毎年ハワイ島のヒロで開かれています。
1963年に始まった時には、ただの発表会の域を出なかったのですが、年々大がかりになり、
1971年からは審査員が点数をつける競技形式が始まりました。
パレードやミュージカルなども合わせて催され、イースター(復活祭)から1週間はハワイ全土はもちろん、
世界中のフラ愛好者がヒロの町に詰めかけます。
また日本でも、独特のリズムに魅い出されたフラ愛好家による競技会が各地で開催されています。
中でも有名なのは、東京で行われるキング・カメハメハ・フラ・コンペティション日本大会です。
日本大会と言われる通り、本大会は毎年6月にオアフ島ホノルルで開催されています。
「メリー・モナーク・フェスティバル」と並んで、世界でも権威のある二大大会なのです。
日本大会のワヒネカヒコ(女性古典フラ)部門、ワヒネアウアナ(女性現代フラ)、
クプナワヒネ(クプナとはハワイ語で祖父母、年長者のことで、同大会では45歳以上の女性を対象)部門の
優勝チームは本大会への出場権が獲得できます。
ダンスと言ってもゆるやかなテンポと動きだけで踊れるものもあるので、
健康目的としたシニアにも人気ができているようです。
鮮やかな色のムームーを着たり、かぐわしいレイを下げることも華やかな気持ちにさせてくれます。
踊っている間に、気持ちまで癒してくれる効果があるのは、
やはり宗教的な意味合いを持っていたことに起因するのかもしれません。